ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)について
ピロリ菌は胃の粘膜に生息しているらせんの形をした細菌です。一包の端に鞭毛(べんもう)と呼ばれる毛が4~8本付いていて、活発に活動することができます。胃には強い酸(胃酸)があるため、昔から細菌はいないと考えられていましたが、1983年にオーストラリアの医師がピロリ菌が胃の中に生息していることを報告しました。
ピロリ菌の関係する病気について
○ピロリ菌はどんな病気を起こすのか?
ピロリ菌に感染すると胃に炎症を起こすことが確認されていますが、ほとんどの人は症状を自覚しません。胃・十二指腸潰瘍の患者さんは、ピロリ菌に感染していることが多く、潰瘍の発生、さらに再発や治りにくさに、ピロリ菌が関係していることがわかっています。
○ピロリ菌を除菌するとどうなるのですか?
これまで胃潰瘍や十二指腸潰瘍は再発しやすく、再発するたびに治療が必要なやっかいな病気と考えられていました。薬を服用することによりピロリ菌を退治する治療を「除菌療法」といいます。ピロリ菌に感染している場合、この除菌療法を行うことで、完全というわけではありませんが、大部分の潰瘍の再発が抑制することがわかってきました。
○ピロリ菌に感染している人はみんな除菌した方がいいのか?
ピロリ菌に感染しているすべての人が除菌療法を受けなければならないわけではありません。日本人のピロリ菌感染者の数は約6000万人といわれていますが、ほとんどのピロリ菌感染者は、症状もなく、健康に暮らしています。除菌療法の対象となる人は、胃潰瘍または十二指腸潰瘍の患者さんでピロリ菌に感染している人です。
○潰瘍の原因はピロリ菌だけなのですか?
ピロリ菌以外の潰瘍の原因として最も重要なのが、非ステロイド性消炎鎮痛剤です。低用量のアスピリンの服用でも潰瘍ができることがあるので注意しましょう。また、お酒やタバコ、あるいは過度のストレスなどが潰瘍の原因となることがあります。
ピロリ菌除菌療法について
○ピロリ菌除菌療法とはどのようなことをするのか?
ピロリ菌の除菌療法とは、2種類の「抗菌薬」と「胃酸の分泌を抑える薬」の合計3剤(例:パセトシン、クラリシッド、パリエットなど)を同時に1日2回、7日間服用する治療法です。すべての治療が終了した後、4週間以上経過してから、ピロリ菌が除菌できたかどうか、もう一度検査する必要があります。
○除菌療法の注意点は?
確実にピロリ菌を除菌するために、指示されたお薬は必ず服用するようにしてください。自分の判断で服薬を中止すると、除菌に失敗して、治療薬に耐性をもったピロリ菌があらわれることがあります。
○除菌療法の成功率は?
正しくお薬を服用すれば、1回目の除菌療法は約80%の確率で成功します。1回目の除菌療法でピロリ菌が除菌できなかった場合は、2種類の抗菌薬のうち一つを初回とは別の薬(フラジール)に変えて、再び除菌療法を行います。この方法で行うと2回目の除菌療法は約80%を超える確立で成功します。
○副作用があらわれたらどうすればいいですか?
軟便や下痢、あるいは味覚異常が起こった場合には、症状に応じて次のように対処してください。
・軟便、軽い下痢または味覚異常の場合
自分の判断で、服用する量や回数を減らしたりせず、最後まで服用を続けてください。ただし、服用を続けているうちに下痢や味覚異常がひどくなった場合には、我慢せず、医師又は薬剤師に相談してください。
・発熱、腹痛をともなう下痢、あるいは便に血が混ざっている場合
このような場合は直ちに薬の服用を中止して、医師又は薬剤師に連絡してください。
参考資料 : ピロリ菌と胃・十二指腸潰瘍 Q&A(武田薬品工業)
リンク : 胃・十二指腸潰瘍とピロリ菌
(http://www.takeda.co.jp/pharm/jap/seikatu/pylori/)