お薬のはなし

痔とさよならするためのQ&A

【はじめに】

痔の悩み 痔の悩みを抱えている患者さんは、成人の3人に1人以上であると言われています。痔は、二本足で歩く人間の宿命的な病気です。人間は直立しているために肛門の血液が流れにくく、もともと痔になりやすい体質をしているのです。
 痔は誰にでも起こりうる病気なのですが、おしりをみせる恥ずかしさや治療に対する不安で一人悩んでいる方が非常に多いようです。このQ&Aをきっかけに悩みを克服するきっかけとなれば幸いです。

【痔とはどのような病気ですか?】

痔は大きく分けて3種類あります。

○痔核(いぼ痔)・・・肛門を閉じるクッションの役割をしている血管がうっ血して出血したり、その部分を支える組織が弱くなり肛門の外に出てくる。発生する部位によって内痔核と外痔核がある。

○裂肛(きれ痔)・・・硬い便によって肛門の皮膚が裂け、出血する。

○痔ろう(あな痔・・・肛門の近くが最近の感染により化膿し(肛門周囲膿瘍)、そこから膿が出て管が残った状態になる。

【痔は何科を受診すればいいですか?】

 痔の治療は肛門科で行います。
近くに肛門科がない場合は、外科または消化器外科を受診してください。

【痔の原因はなんですか?】

 痔の原因は人それぞれで、さまざまな原因で年齢・性別を問わず起こる病気です。
最近は、ストレスから便秘を起こして裂肛(きれ痔)になる子供が多くなっています。お年寄りでは、肛門近くの粘膜がゆるくなり、それが肛門の外に出てきて排便障害を起こすことがよくあります。
また、女性の場合、妊娠や出産時のいきみなどで肛門に負担がかかったり、授乳による水分不足で便秘を起こしたりして痔になりやすい傾向がみられます。
その他にも、他の病気の治療で飲んでいる薬が原因で便秘や下痢を起こして痔の症状が悪くなることがあります。

【診察はどんなことをするのですか?】

 診察室はパーテーションで仕切られていたり、穴あきシーツやタオルで覆うなど個人のプライバシーを守るための配慮がされています。

(1)問診・・・先生に症状を伝えたり、問診表に症状などを書き込みます。
     痛み、出血、不快感・かゆみなどの異常、妊娠の有無

(2)診察・・・視診(目で肛門周囲の状態を見ます)
     触診・指診(直接患部に触れて痔の状態を調べます)
     肛門鏡による診察(器具を使って肛門内の状態を調べます)

(3)先生からの説明

【痔はどのような治療をするのですか?】

 規則正しい排便習慣や、食生活の改善などの生活療法が基本になります。
痔の症状が軽い場合はお薬で治療しますが、病状が進んでいる時は手術を行います。
手術を行う患者さんは全体の1~2割程度です。

【痔の薬物治療について教えてください】

 痔の薬には、外用薬と内服薬があります。外用薬は、軟膏と坐薬があります。
外用薬-痛み、腫れ、出血を抑える薬
内服薬-便をやわらかくする薬、炎症を抑える薬、抗生物質など

【痔の手術はどのようなものですか?】

 手術の内容によって多少の違いはありますが、痔の手術自体にかかる時間は30分程度です。手術前後は、下記のように過ごします。

〇手術前
 手術に必要な諸検査を行います。(尿・血液検査、心電図、レントゲン、大腸内視鏡など)
 手術当日は、手術までに排便をすましておきます。手術前の食事は控えてください。

〇手術後
手術後は、麻酔の影響で頭痛が起こる場合がありますので、できるだけベットで安静にして水分をとるようにしましょう。

手術後の痛みについて
手術後約1時間は麻酔の効果で痛みはありませんが、麻酔がきれると少し痛みを感じることがあります。痛む時は肛門に力を入れずに横向きで寝ていると少し楽になります。

手術後の出血について
排便時に多少の出血がみられることがあります。出血が多い時は、看護師に伝えてください。

 通常、手術後1週間~10日前後で退院となります。退院後は2~3回通院が必要です。ただし、傷口が完全に治るまでには約1ヶ月かかります。

【痔は再発するのでしょうか?】

 便秘や下痢など肛門への負担が多い生活をしていると、再発することがあります。日常生活の注意点に気を配り、肛門に負担をかけない生活を心掛けることが大切です。

〇日常生活の注意点
トイレで強くいきまない
刺激物は控え、野菜や食物繊維の多い食べ物を多くとる
腰を冷やさない
お尻を清潔に保つ
お酒は少量に
適度な運動を行う
便秘・下痢に注意
便意を感じた時に排便する
たばこは控え目に
毎日お風呂に入る
座りっぱなしなど、長時間同じ姿勢は避ける

【参考】 「痔とさよならするためのQ&A」 マルホ株式会社

【リンク】 「人に言えない痔の悩みに! い~じ~ net.」
田辺三菱製薬株式会社